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タップアナン・タナードゥンヤワット インタビュー

Q: 今回10日間のリハーサルが終わったけど、あなたにとって印象的だったことをおしえて。

今日私がカオシン(Khao Sing)というキャラクターを演じているあるシーンの時に岡田さんが言ったのは、演じる側がカオシンの役を演じるだけでなく観客もカオシンになってもらわないといけない、観客にも自分はカオシンなんだと感じさせないといけないということ。私はそういう演出の仕方を今まで受けたとことがありませんでした。一人称として役を演じやり、あるいは三人称としての存在でいて、ただ観客に物語を追わせたり、その人物に興味を持たせるのではなく、その人物にさせてしまうということにとても興味深く感じました。

Q: あなたは俳優として以外にも自分で創作活動もしていますか?

はい、大学卒業後に2つの作品を作りました。そのうちの一つは、チュラーロンコーン大学文学部(Chulalongkorn University文学部)の先生、ソッサイ先生の名を冠した「ソッサイ賞」で、最優秀俳優賞と最優秀プレゼンテーション賞を受賞しています。もう一つはは、Bankok Theater Festivalで作品を発表しました。演出、脚本も手がけて、以前はテレビドラマの脚本も書いていましたが、俳優の仕事のほうが好きなので、今は俳優活動だけに集中したいと思っています。

Q:どういった方向性で今後の俳優活動を展開したい?

まずは、俳優の仕事だけで生活を支えられるまでに自立したいと思っています。最近は結構忙しくなってきていますが、演劇専攻を卒業してもそこまでルックスが良くもない俳優が、コネも使わず自分の実力だけでやっていくということはとても難しいです。今の目標は自分の実力でやっていくための俳優としてのキャリアパスを作っていくことですね。

俳優の仕事だけでなく、自分で作品を作って、そこに実力ある後輩の俳優/女優を起用することで、彼らを国内外の様々な人たちに紹介する、というような方向性も考えています。

これからもっと商業的な仕事もやっていきたいけれど、同時にこれまでやってきたような面白い仕事も継続してやりたいですね。

Q: 今回の小説を読んでどう思った?

登場人物のすべてが非常に興味深いと思います。特に主人公のカオシンは一般的な人に好かれるヒーローのようなキャラクターではなく、わがままなところもある。自分が辿ってきた人生もカオシンのものに近いし、多くの点で自分と似すぎていると感じたから、カオシンがかわいいとは思えないんです。「ああ!カオシンがまたやらかしたよ!」という感じで読んでいました。

Q: カオシンとあなたは、どういう点が似ている?

自分のアーティストとしての辿ってきたキャリアパスが似ています。卒業制作の時、僕は大学の教えの通りにやらず、それでも卒業しました。自分の力を信じて、卒業後も自分で作品を作ってきました。それでも、結局、経済的な理由に負けて生活の糧のために脚本を書く仕事をしました。その仕事が苦しくて、そんなどん底の人生を解決させる方法にセックスを選びました。カオシンは自分がアーティストであることを口実に、自分勝手な人生を送ってきたというのも自分と全く同じ。でも、それが悪いと言っているのではありません。これはただすでに起きた出来事であり、これからどうなるかだと思います。自分は100%カオシンと同じ考え方を持っているわけではありません。だけど、人の苦しみの本質的な原因は同じなんだろうと思います。

プロフィール

タップアナン・タナードゥンヤワット

俳優、テレビ脚本家、作家。チュラロンコーン大学コミュニケーション・アーツ学部卒業。パスカル・ランベール演出作品などに出演、ミュージカル、テレビ映画にも出演のかたわら、自らの演出作品も手がける。

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