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ケーマチャット・スームスックチャルーンチャイ インタビュー

Q: 6日目の稽古が終わった印象は?

この小説は自分の意見をスマートに潔く語っていて、考え方も深く、いい作品だと思います。

それから、岡田さんがこの小説の深みを演劇化しようとしているプロセスがとても興味深いです。例えば、第1章の冒頭である俳優が寝ている時に別の俳優がナレーターとして語る場面。ナレーションの語りによって観客の頭の中に、ステージで何が起こっているかという像が立ち上がるけど、イメージが明確に形を結ぶんです。岡田さんの、観客の想像力を最大に生かそうとする演出方法がとても面白いですね。ステージに多くのセットを置くと観客の想像をコントロールすることができるけれど、逆に岡田さんはセットを減らすことで想像を誘発しようとしています。

Q: 岡田作品のような演出方法はあまりタイでは見られない?

同じようなアイディアを持つ人は多いと思うけれど、これまで観客として作品を見ているだけでは”想像”が持つ力を強く意識して作っているように思える作品はなかったですね。

このプロジェクトに参加して、岡田さんの説明を聞きながら間近でクリエーションのプロセスを知ることで、想像の重要性がよくわかりました。

例えば、池の横にマーブル柄のテーブルが置いてある、という場面設定の時、他の作品はそれを言葉で説明するんですけど、岡田さんはその像を実際に観客の頭の中に結ぼうと工夫しているんです。

Q: あなたはチュラロンコーン大学工学部(Chulalongkorn University工学部)卒業後、Democrazy Theatre Studioで俳優や照明家として活動しているけれど、工学の世界から演劇に飛び込んだきっかけは?

大学生時代にバンドをやっていて、そこで知り合った芸術学部の先輩に誘われて演劇に参加したのが最初の出会いでした。大学4年生の時には照明の勉強をしていたし、大学時代に演劇業界の知り合いがたくさん出来たから、その流れで卒業後も演劇関係の仕事の誘いをもらうことができました。そうした中でも特にDemocrazyは他に比べて社会的な問題を発表する作品が多かったので、サラリーマンになって安定した生活を送るよりも、意義ある作品を生み出していく人生のほうが自分にとって価値があると思い、Democrazyに入りました。

Q: この作品を発表することでどんな影響をタイ社会に与えたい?

この作品は、タイ社会に暮らす一部の人の声がまとまった作品だと思います。まずはそれをたくさんの人に届けたいです。そのためにも、多くの観客にこの作品を見てもらい、この声を理解してもらいたいと思っています。

プロフィール

ケーマチャット・スームスックチャルーンチャイ 

1988年生まれ。チュラロンコーン大学工学部出身。在学中に舞台照明を学び、演劇活動に携わる。バンコクの劇団「Democrazy Theatre Studio」メンバーであり、俳優、テクニカルマネージャー、照明デザインを務める。俳優としては、B-floor Theatre共同芸術監督のテーラワット・ムンウィライによる “Fundamental”、バンコクの劇団New Theatre SocietyのParnrut Kritchanchai による “Jap Rok ‒ imaginary Invali”などに出演。

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