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ジャールナン・パンタチャート インタビュー

Q: プロジェクトの構想や全体像を聞いてどう思った?

長期的な計画も立っているプロジェクトで、すごく興味深いと思いました。また、タイの歴史に関することが多く書かれている小説が日本の演出家である岡田利規さんの目に止まっていること、そしてその中で彼が選ぶ題材についても興味深く思っています。普遍的で人間的な題材も潜んでいるように感じています。

Q: 原作小説の中で印象に残っている点を教えてください。

原作第2章で描かれているギャラリーについてのエピソードは、私が大学を卒業してそのギャラリーに就職した時と同じ頃に起こっていて、そのギャラリストを私は実際に知っています。そのため、作中に自分が見えて、当時の雰囲気や匂いが立ち込めるようなノスタルジーを感じました。わたしはウティット(・ヘーマムーン)と同世代で、大学を卒業したばかりの時、シラパコーン大学でパフォーマンスをした時に、当時シラパコーン大学のキュレーターをしていたウティットに知り合ったのです。また、第1章で描かれている1992年5月の事件当時、自分は高校生でした。地方に住んでいたため、ニュースで流れる映像を見て、銃撃戦があったことを知りました。私が好きだった大学生の先輩もデモに参加して行方不明になり、2ヶ月後見つかりましたが、そのまま大学を辞めました。

Q: 作品を通じて感じたメッセージは?

作家の怒りと、心が引き裂かれるような悲しみを感じました。また、罪悪感と後ろめたい喜びも見えました。例えば、変な体勢での自慰行為を達成できた時の喜びなど。作中では、物語が進むにつれ性行為の意味が変化しています。そして、2010年頃のセックスは最悪なものに感じ、それはもはや快楽の為ではなく、強姦のようにも思いました。

Q: 自身で創作しているのはどんな作品?

私が演出を始めたのは2008〜2009年頃で、上演のたびに作品の形態を変えていますが、観客の反応によって俳優自身の演技が変化する、という話を耳にして、一貫して観客とのインタラクティブな要素を持った作品を作っています。最初に作った作品は、唐辛子や砂糖など様々な調味料・食材を観客に渡して、その観客が面白いと思ったら持っている食材をスープに入れ、最後にそれをみんなで食べる、というもの。上演する回によって味が変わります。
現在取り組んでいるのは(※インタビュー収録の2017年9月当時)、以前の作品のリバイバル。劇場を国家に見立て、パフォーマンスの中で国の将来を観客に決めてもらう作品です。

プロフィール

ジャールナン・パンタチャート

チェンマイ大学マス・コミュニケーション学部を卒業。バンコクを拠点とするフィジカル・シアター・カンパニーB-floor theatreの共同設立者であり、共同芸術監督を務める。演出家に加え、ダイナミックな身体パフォーマーとしてもとしても活動し、カンパニー作品への出演のほか、ドイツ、日本、シンガポール、韓国、アメリカなどで国際共同製作作品にも多数関わり、“タイで最も素晴らしい女優”と評されるなど、高い評価を得ている。2014年、タイ文化省よりSilpathorn Award受賞。2016年、ショートフィルム“Ferris Wheels”での演技によりショートショート映画祭&アジア2016にて映画最優秀俳優賞受賞。

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